哺乳(ほにゅう)動物の心筋は横紋筋で構成されているが、そのなかの特殊心筋線維(細胞)は、自動的に律動的な運動をおこす性質をもっている。その最初の律動運動をおこす起点となるのが洞房結節(洞結節)である。存在する部位は右心房の上大静脈口前方壁で、大きさ約2.5センチメートル、幅約0.2センチメートルの細長い特殊心筋線維集団である。洞房結節は、発見者であるイギリスの解剖学者キースA. Keith(1866―1955)とイギリスの生理学者フラックM. W. Flack(1882―1931)の2人の名前をとってキース‐フラック結節ともよばれる。また、洞房結節は、心臓の自律的、律動的運動の始まりであることから、心臓拍動の「歩調とり」pacemakerとよばれることもある。洞の名称は胎児期の心臓の静脈洞からきたものである。なお、爬虫(はちゅう)類、両生類、魚類では洞房結節に相当する静脈洞が発達しており、これが心臓の律動運動を行っている。
[嶋井和世]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…心臓は他の臓器と異なり,みずからの律動性によって絶え間なく,しかも順序よく(心房から心室へ)収縮と弛緩を繰り返し,血液循環を行っている。この律動の規則性は,右心房内大静脈開口部に存在するわずか1.5mm×0.5mmの心筋細胞の塊(洞房結節または洞結節という)の反復興奮のリズムにより調律されている。このように洞房結節は心臓の収縮,弛緩のリズム全体を決定しているので,歩調とりまたはペースメーカーpacemakerといわれる。…
※「洞房結節」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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